耐久性の高いレッドシダーを鎧張りにした剛健な印象のエントランス。この意匠がA様邸の個性を快弁に語ります。以前は同敷地に建つ母方の実家に暮らしていた施主のAさん一家は老朽化から梅雨時期の湿気や冬の寒さに悩まされ、建替えを決めました。厚い板張りの壁には30cmもの断熱材を施し、暑さ寒さと縁を切った一年を通して快適な空間を実現しました。
住宅性能とあわせて、木を使ったあたたかみを感じる新居であることもご夫妻の要望にあり、素材に関してはこだわりを持ってセレクトしました。自然素材を用いる第一の目的は「手ざわりの良さ」です。足裏でその感触を楽しんでもらえるよう、北海道産のナラ材の床や、玄関のたたきからLDKに連続させた大谷石などを用いています。そのままで存在感があるので、デザインの過剰を慎んで人を
包むような優しさのある空間を目指しました。
プランニングの際、熱環境で考えると家の隅々まで均一な温度にするためには、仕切りを設けずオープンであることが望ましい。でも暮らしやすさのためには、すべて素通しではなく、空間はつながりながら、身を置いたときに寄りどころを感じる緩やかな区別が必要です。そのためA様邸は中庭を囲む形のL字型の形状をとっています。中庭は子どもの遊び場にもなり、庭木の緑が癒やしをもたらす。削ぎ落としながらも、細部の仕上げにより心地よい均整を生み、安堵を感じさせる空間になりました。

 
内装材／天然スタイルカベ（塗カベ）、ビニルクロス
床材／ナラ無垢フローリングt15(国産)
開口部／ユニルクス（樹脂トリプル）
キッチン／リクシル
バスルーム／TOTO
暖房／PS 温水パネルヒーター
その他／ハイブリットガス給湯器エコワン
竣工年月／2016年8月
工期／約120日
家族構成／ご夫婦+お子様２人