谷を走る国道から山裾へ向かう土地に建つ、ガレージと母屋が重なった建物。重厚な玄関ドアを開くと、建坪の奥行き分もある長い吹き抜けを持つ、立体的な住空間が広がります。鉄と木材のスケルトン階段が折れ上がり、その先に見えるリビングでは、山の緑を映す大きな窓が羨望のロケーションを再確認させてくれます。
プラン提案のために土地の下見に訪れた際、美しい森林とそこからそよぐ風、聞こえてくる川のせせらぎなど、造成地では感じたことのない、自然の魅力に圧倒されました。そしてこの土地の自然は、冬となれば2mの雪で生活を閉じ込めるほどの猛威をふるいます。そんな人智を超えた存在への憧れと畏怖をO様邸の建物の内外の設計に反映しました。
このO様邸のプランの大枠は、景色の取り込み方と雪対策、そして「冬は炎を眺めながら過ごしたい」という要望から形づくられました。炎を眺めて過ごす冬、緑に涼を求める夏。季節の変化をひとつひとつを味わうことの豊かさ。立体的な住空間を印象づける大きな吹き抜けは、薪ストープの熱やエアコンの冷気を上下階へ効率良く配分する、ダクトスペースのような役割を果たしています。不足ない断熱施工によってガラスの窓からは、四季折々の景色の恩恵だけがもたらされます。

 
外装材／ガルバリウム鋼板
壁材/エッグペイント仕上げ
床材/ナラ無垢材（国産）
開口部／断熱樹脂サッシトリプルガラス
キッチン／インパクト（オーダー品）
バスルーム／TOTO
暖房／薪ストーブ、一部温水土間パイピング
竣工年月／2019年8月
工期／約120日
家族構成／ご夫婦+お子様1人