この建物が建つのは幹線道路から一本入った高台にある、静かで緑豊かな土地。お施主様からの要望は多くなく、四人家族が過不足なく暮らせる家というシンプルなベースで計画が始まりました。
建物の配置にあたり、日照のために南面の敷地を出来るだけ広く残すこと、狭い道路から車が出入りしやすいことなどを考慮した結果、カーポート2台分が道路に沿って並び、南面の中庭へ視線を和らげる外観デザインが生まれました。外装は秋田県産の無塗装のスギ板。多数の神社と森が点在する環境からか、周辺にも木の外装の建物が多く見られ、背景の森と呼応した静かな町並みをつくっています。
塗装膜のない木材を外部に使用することに心配の声も聞きますが、本来、木材は濡れたら乾く環境にさえあれば、素のままでとても丈夫な材料です。大工と知恵を出し合い、耐久性とデザインのためにひと手間をかけた独自のスリット加工を施した板張りは、いつしか建物全体がシルバー色に深まり、青景の森に今よりも溶けこんで馴染んでいく経年変化を楽しめます。

 
壁材／塗装仕上げ（エッグペイント）
床材／無垢板張り（ボルドーパイン）
開口部／国産断熱サッシ（トリプル硝子）
キッチン／クリナップ
バスルーム／TOTO
暖房／パネルヒーディング（熱源 電気）
竣工年月／2020年8月
工期／約150日
家族構成／祖母、ご夫婦、お子様1人